2018年10月3日(水)
英首相 “合意なきEU離脱も辞さず”
MAY: NO DEAL BETTER THAN BAD DEAL
英語タイトルのMAY: NO DEAL BETTER THAN BAD DEALは「メイ首相、『間違った合意をするよりは何も合意しないほうがまし』」です。英文ニュースの見出しにおいて、:(コロン)以下は話者の言葉の内容を示します。
英国のテリーザ・メイ首相は、自らが取りまとめたEU=ヨーロッパ連合からの「離脱白書」にEU諸国から厳しい意見が相次いだことについて、「説明もせず、代替案も示さないまま相手を拒絶することは許されない」と述べたうえで、合意なき離脱も辞さない姿勢を強調しました。
イギリスのEU離脱の見通しはどうなるのでしょうか。このニュースで最新の国際情勢を読み取ってみましょう。
British Prime Minister Theresa May says Brexit negotiations with the EU have hit an impasse. She has hinted that her country may quit the bloc without a deal from other member nations.
(Theresa May / British Prime Minister)
"Anything which fails to respect the referendum, or which effectively divides our country in two, would be a bad deal. And I have always said no deal is better than a bad deal."
May was hoping to hammer out an agreement at an EU summit on Thursday. Instead, her Brexit blueprint came in for heavy criticism from other leaders. One issue that continues to divide the sides is what to do about the border between Ireland and Northern Ireland.
In a televised address, May said it's not acceptable for EU members to simply reject her ideas without proposing alternatives. She said it's time for the EU to show Britain some respect. May also rejected the possibility of a second Brexit referendum.
She said if necessary, Britain will be ready to leave the bloc without a deal.
センテンスごとに学ぶ
Britishは「英国の」という形容詞ですが、日本で「イギリス」と呼んでいる国の正式名称は、UK(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)「連合王国」のことです。センテンス5に出てくるとおり、特に北アイルランドの存在はEUとの交渉で大きな争点になっています。
BrexitはBritain「英国」とexit「離脱」を合わせた造語で、EUからの離脱の是非を問う国民投票が行われた2016年前後から世界に広まり、現在では時事英語として定着しています。
impasseは「行き止まり、袋小路」で、hit an impasseは「(交渉などが)行き詰まる」という比喩的な表現です。
sheはメイ首相で、her countryは英国を指しています。
blocは国家間の「連合」という意味で、ここではEUを指しています。blocは国の連合にかぎらず、国会議員などの集団にも使われ、ruling blocなら「与党勢力」、opposition blocなら「野党勢力」です。
dealは、ビジネスにおいては「商談、契約」などの意味ですが、ここでは国家間の「合意」や「取り決め」という意味で用いられています。
メイ首相の声明の一節です。
anything「いかなるもの」は、ここでは「いかなる合意」という意味で用いられていて、which以下でその内容を説明しています。
fail to ...は「~しそこなう、~できない」で、「(EU離脱を決定した)国民投票を尊重できないような、いかなる合意も」という内容です。
後段のwhich以下は「事実上我が国を二分するような」という意味ですが、これもanythingにかかっています。
メイ首相は、こうしたいかなる合意もbad deal「間違った合意」だと述べています。badには「悪い、よくない」というほか、「害のある、不適切な、誤った」という意味もあります。
2文目の英語表現は、no deal「合意がないこと」のほうがbad deal「間違った合意」よりもbetter「より良い」ですから、こなれた日本語では訳文のように「間違った合意をするくらいなら何も合意しないほうがましだ」となります。
hammer outは、文字どおりには「ハンマーで叩いて形作る」ですが、比喩的に「(議論を重ねて合意や結論を)打ち出す」という意味でもよく使われる表現です。
insteadは接続詞で、前述の内容に反する展開を導きます。「それどころか、それよりも、その代わりに」などと訳せます。
come in forは「(批判などを)受ける、浴びる」という表現で、come in for criticism「批判を受ける、非難を浴びる」という形でよく使われます。
メイ首相は、オーストリアで開かれたEUの首脳会議で自らが取りまとめた「離脱白書」への支持を訴えましたが、各国からは厳しい意見が相次ぎました。
issueは「問題点、争点」で、that以下がその内容を示しています。
ここでのsideは「立場」で、divide the sidesは「賛成や反対の立場に分け隔てる」という意味です。
地理的にアイルランドと北アイルランドは同じ島にあり、英国領である北アイルランドをEUから離脱させつつ、EU加盟国であるアイルランドとの間で厳格な国境管理を行うことは難しいと考えられています。
televisedは「テレビ放映された」という形容詞で、addressは「演説」です。
it is ... for+人+to do ...は「人が~することは~である」という構文です。
ここでのalternativeは「代替案、代替物」という名詞ですが、形容詞として「代わりの」という用法もあります。この場合は、形容詞alternateも同じ意味になります。
it's time for ...は「~のときだ」という定型的な表現で、it’s time for lunch「昼食の時間だ」のように使われます。なお、time以下の時制が過去形になった場合は「もう~してもいい頃だ」というニュアンスを含みます。例えば、it's time you went to bedなら「もう君は寝る時間だ」です。
show Britain some respectは「イギリスに一定の敬意を示す」ですが、つまり「EU離脱を決めた国民の判断を尊重する」ということです。