2019年5月10日(金)
“ペットと同伴出勤”で人材確保へ
U.S. FIRMS COMPETE FOR TALENT
英語タイトルのU.S. FIRMS COMPETE FOR TALENTは「アメリカ企業、人材を奪い合う」です。compete for ...は「~を求めて(手に入れようと)競い合う、競い合って~を求める、~を奪い合う」という意味です。
今回のニュースは、人材確保に向けたあるアメリカの会社の取り組みをユーモアたっぷりに伝えています。給与以外の「特典」を英語で何と言うでしょうか。お勤めの会社の「特典」を英語でどのように説明できるか考えてみましょう。
Many U.S. tech firms are looking at lower profits. In fact, some of them are going to the dogs — but in a good way, as they try to attract skilled workers.
This company allows its employees to bring their dogs — a four-legged perk that's popular among emerging technology businesses. The wagging tails and barking is just another day at the office here, where employees bring in more than a dozen dogs every day.
(Employee)
"Whenever I feel stressed out and I need a break, then I have her. And I can play with her."
The company says it's a cost-effective way to attract the best employees.
(Phil Schrader / CEO, GumGum)
"Having a dog-friendly policy in the office really helps identify with the type of culture they are stepping into, and it gives us an opportunity to win — an opportunity to truly compete, in a different way."
The tech industry is a dog-eat-dog world, and more firms feel the need to offer attractive benefit packages.
センテンスごとに学ぶ
言葉遊びに気づいてください。go to the dogsは「立ち行かなくなる、堕落する、落ちぶれる」という表現なのですが、ここでは「犬にはしる、犬に頼る」という文字どおりの読み方と引っかけてあるのです。直前でlower profits「利益の低下」と聞いたばかりの視聴者は、some of them are going to the dogsで「ああそうか、立ち行かなくなる会社もあるのか」と思うはずです。そう思わせておいて、but in a good way「でも良い意味で」と続けるので、視聴者はまごつきます。そこがおもしろいところです。種明かしは次のセンテンスで行います。
英語の熟語・慣用句の中のdogは、あまり好ましい存在としては登場しません。例えば(as) sick as a dog「ひどく気分が悪い」、die like a dog「犬死にする」、lead a dog's life「惨めな生活を送る」などの表現があります。
NHK WORLDが取材するこの会社は、AIを使った広告サービスを提供している「ガムガム」という企業です。
allow someone to ...は「(誰かが)~することを認める」です。
perkはperquisiteの略で、「(給与とは別の)特典、特権」です。会話では普通perquisiteではなく、略式のperkを使います。このニュースでは福利厚生に近い意味合いで、犬同伴で出社できる特典を、ユーモアを込めてa four-legged perk「4本脚の特典」と呼んでいます。この制度には、お金をかけずに福利厚生を充実させ、優秀な人材を確保するねらいがあります。
動詞emergeは「現れる、浮かび上がる、台頭する」で、そこから派生したemergingは「新興の」という意味です。経済成長の著しい国々をemerging countries、またはemerging economiesと言います。
wagは、自動詞では「(身体の一部が)揺れ動く、しきりに動く」、他動詞では「(身体の一部を)揺れ動かせる、揺さぶる、しきりに動かす」です。例えば、wag one's tailなら「(動物が)尻尾を振る」、wag one's finger at someoneなら「(誰かに向けて)人差し指を立てて振る」で、人または動物をしかるときのジェスチャーです。
just anotherは「ほかと変わらない、何の変哲もない」という意味です。例えば、just another actorと言えば「平凡な役者」です。
「毎日~する」と副詞で使うときは、本文のようにevery dayと2語に分けて綴ります。一方「日々の、日常の」と形容詞で使うときは、everydayと1語で綴ります。例えば、everyday businessなら「日常業務」、everyday conversationなら「日常会話」です。
従業員の言葉です。
(be) stressed outは「へとへとに疲れて、疲れすぎてリラックスできない」です。
ここでのbreakは「休憩、休息」という意味の名詞です。
飼い主からすれば家族同然ですので、犬を指す代名詞にitではなく、herを使っています。
cost-effectiveは「コスト効率の良い、費用対効果の良い」です。
attractは「引き寄せる」で、人や物であれ、人の興味・関心であれ、対象になりえます。名詞形はattractionで「引き寄せるもの、客寄せの目玉、(娯楽施設などの)アトラクション」です。センテンス7には、形容詞attractive「人を引きつける魅力のある」が出てきます。
フィル・シュレーダー社長の言葉です。
friendlyは「~に優しい」という意味で、いろいろな単語と組んで複合語を作ります。犬に関連したものとしては、dog-friendly accommodation「犬連れで泊まれる宿泊施設」、dog-friendly restaurant 「犬同伴で入れるレストラン」などがあります。ほかにも、eco-friendlyなら「環境に優しい」、user-friendlyなら「使い勝手の良い」、people-friendlyなら「人に優しい」です。
identify with ...は「~と一体感を持つ、~に共鳴する、~に親近感を覚える、意気投合する」という意味です。
theyが指すのは、この企業文化に新たに足を踏み入れる人です。その人たちが、犬同伴出社を認めている企業文化に賛同して、この会社を選びやすくなるということです。
it give us an opportunity to winのあとに、win「獲得する」の目的語the best employeesが省略されています。そのあとで、(it gives us) an opportunity to truly competeと言い添えています。
全体的に文法どおりのセンテンスではありませんが、会話ですから、このように形が崩れることはよくあります。
このセンテンスもdogにかけた言葉遊びになっています。dog-eat-dogは「し烈な競争の、勝ち残るためならどんな手段でも使う」という意味で、a dog-eat-dog worldは 「食うか食われるかの世の中、生き馬の目を抜く世の中、弱肉強食の世界」です。
センテンス1とセンテンス5に出てきたattractの形容詞形が、attractive「魅力的な、人を魅了する」です。
benefit packageは「福利厚生」です。benefits packageのように、benefitを複数形にして使うことも多くあります。fringe benefit「給与以外の特典」という言葉もあり、これはセンテンス2のperkと近い意味です。
このニュースで紹介されているペット同伴出勤以外にも、社員の配偶者が別の会社に勤めていて育児休暇制度がない場合には、一定の育児期間中、配偶者の給料も支払ったり、海外旅行の費用を負担したりする会社もあるということです。