2019年6月3日(月)
米資産家 授業料ローン全額負担を約束
U.S. BILLIONAIRE STUNS WITH GRAD GIFT
英語タイトルのU.S. BILLIONAIRE STUNS WITH GRAD GIFTは「アメリカの億万長者が卒業祝いで驚かせる」です。stunは「呆然とさせる」ですが、stun with ...は「~で大いに感動させる」という意味にもなります。ここでは驚かせた対象となる「卒業生」や「世間」が省略されていると考えましょう。gradはgraduate「卒業生」の省略形ですが、grad giftは「卒業祝い」を指しています。
アメリカの資産家が、大学の卒業式で演説した際、卒業生たちが抱えている授業料支払いのための借金を全額返済できるよう補助すると発表し、注目を集めています。
多額の学生ローンが社会問題となるアメリカの現状について、英語でも話題にしてみましょう。
(Robert Smith / Investor)
"This is my class, 2019, and my family is making a grant to eliminate their student loans."
Robert Smith is known as the wealthiest African-American in the U.S., and he's helping students at this historically black college. A typical U.S. college student graduates owing 25,000 dollars. Smith's pledge to pay off debts should cost 40 million dollars.
センテンスごとに学ぶ
real shockは「大きな驚き、ショック」ですから、got a real shockは「大いに驚いた」です。反対に、give a real shock to ...なら「~を大いに驚かせた」となります。ちなみに、日本語で「ショック」と言うと「悪い意味の驚き」ですが、英語のshockは「良い意味の驚き」も含みます。
commencement ceremonyは「卒業式」です。commencementが「始まり」であるのに、なぜ「卒業」と訳されるのか不可解に感じるかもしれませんが、これはcommencementを「人生の次の局面の始まり」と位置づけて、その節目として「卒業」を捉えているからです。
Morehouse College「モアハウス大学」は、アメリカ南部ジョージア州にある大学で、卒業生に公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師がいます。
phaseは物事の「局面」で、the next phase of their livesは「彼らの人生の次の局面」、つまり卒業後の新たな進路を指しています。
with one less thing to worry aboutは副詞句を形成し、「心配事が1つ少ない状態で」となります。
billionaireは「億万長者」と訳されますが、厳密に英語の原義に従えば「10億以上」の長者です。一方、millionaireなら「100万長者」として単位が一致します。日英の数字の桁の数え方の違いからずれが生じるのですが、いずれにせよ大富豪を指す表現であることに変わりはありません。
ロバート・スミスさんの演説の一節です。
grantは「助成金、補助金」などを指し、make a grantは「助成金、補助金を出す」です。ここでは、学生ローンを肩代わりするために助成金を出すことを表しています。
eliminateは「取り除く、廃絶する、撲滅する」など、徹底的に排除することを指します。学生の教育費の借金をとことんゼロにしたうえで、新たなスタートを切ってほしいというスミスさんの決意がこの言葉の中に感じられます。
これは卒業式に出席していた同窓生へ向けて語っているので、2019年卒業生についてtheir student loans「彼らの学生ローン」と3人称を使っています。スミスさんは、2019年卒は自分が補助するが、ほかの卒業生については、今後も含めて大学コミュニティとして支援しようと呼びかけました。
wealthiestは、形容詞wealthy「裕福な」の最上級です。yで終わる形容詞を最上級にする場合は、yをiに換えてestを続けますので、綴りに注意しましょう。
African-American「アフリカ系アメリカ人」は、black American「黒人」と同義です。ただし、「黒人」という言葉の響きが、人種差別を排除して多様性を認める現代社会においては不適切とされることがあり、多くの場面でAfrican-Americanという表現が好ましいとされます。社会におけるこうした配慮のことをpolitical correctness「政治的公正」、つまり差別用語を使わないこと、と呼んでいます。
historically black collegeは「黒人のために開かれた大学」で、1960年代の公民権運動以前のアメリカの歴史において、白人と黒人の大学教育が分離されていたことに端を発しています。こうした大学を総称でhistorically black colleges and universities (HBCUs) と呼びます。
ここでのoweは「お金を借りている、借金がある」という意味です。
pay offは「(借金などを)清算する、完済する」という句動詞です。
アメリカでは、大学の授業料の高騰によって、学生1人当たりのローンが平均2万5,000ドル、日本円でおよそ270万円にのぼり、多額の借金が社会問題となっています。スミスさんが負担するローンは、卒業生396人分で、最大で4,000万ドル、およそ44億円になる可能性があると報じられています。