2019年8月6日(火)
10歳の少女が900メートルの岩登り
10-YEAR-OLD CLIMBS YOSEMITE'S EL CAPITAN
今週1週間は、アメリカのABCニュースを取り上げます。キャスターはごく普通の日常会話で語るので、ときに文法的な規範から外れることもありますが、あまり気にすることなく、解説を参考に生き生きとした英語に触れてください。
タイトルの10-YEAR-OLD CLIMBS YOSEMITE'S EL CAPITANは「10歳が、ヨセミテのエル・カピタンに登る」です。
10歳のアメリカ人少女が、ヨセミテ国立公園にある花崗岩の一枚岩エル・カピタンのロッククライミングに史上最年少で成功したという話題です。父親のサポートを受けながら過酷なロッククライミングを成し遂げた彼女の様子を、英語ニュースから読み取ってみましょう。
She is just 10 years old, but the mountains have been right there her entire life. Using safety gear, ropes, harnesses, and a helmet, she gives that thumbs up. She navigated El Capitan, stopping only to rest, camping overnight on a ledge.
(Mike Schneiter)
"We got to kind of hang out together — spend some time on ledges, just relaxing, talking, just talking about the world, talking about life."
After five days, she makes it to the top — modest, and suddenly overcome.
(Mike Schneiter)
"That's your first happy cry?"
(Selah Schneiter)
"Yeah. I just can't believe I just did that."
And after all that work, how did she celebrate?
(Selah Schneiter)
"We went down to the Pizza Deck."
A well-deserved pizza with everything on it — proving she is just 10 years old after all.
センテンスごとに学ぶ
El Capitan「エル・カピタン」は、ヨセミテ国立公園にある花崗岩の一枚岩(monolith)で、この種の岩としては世界最大です。3,000フィートは900メートルを少し上回る高さです。
El Capitanという名前は、Mariposa Battalion「マリポサ大隊」が1851年に現地を探検したときに付けられました。El Capitánは、ネイテイブ・アメリカン(Native American)がこの断崖を呼んでいた言葉をスペイン語に訳したもので、英訳すればthe chiefとなります。最近は、El Capと短縮して呼ぶロッククライマーも多いようです。
youngest person to do ...は「史上最年少で~する人」という定型表現です。youngestの代わりにoldestが入れば、「史上最年長で~する人」となります。
形容詞sheerには「全くの、完全な」という意味がありますが、登山の文脈では「切り立った」状態を指します。
watch「見てください」という命令文で始まるのはキャスターが視聴者に呼びかけているためで、as以下はその内容を示しています。
climbing instructorは「ロッククライミングの指導員」で、climbingの代わりにさまざまなスポーツに置き換えて応用することができます。ski instructorなら「スキー指導員」、tennis instructorなら「テニス指導員」です。
the mountains have been right there her entire lifeは「これまでの人生で、ずっと山はすぐそこにある身近なものでした」という意味です。セーラさんは赤ちゃんのときからヨセミテなどの山を訪れてきました。
give a thumbs upは「(成功や承認の合図として)親指を立てるしぐさをする」です。映像では、セラさんがロッククライミングのさなか、「大丈夫よ」という合図をカメラに送っています。
navigateは一般に「航海する、操縦する」という意味ですが、ここでは「困難を伴う道のりをしっかりと進む」といったニュアンスを伴います。ひとつ間違えれば命の危険を伴うロッククライミングの一歩一歩を、着実にこなしていく状況を描写しています。
overnightは「夜を越えて」という副詞です。
2人がledge「岩棚」を利用して足場を設営し、そこで夜を過ごしたことから、ここではcamp「野営する、キャンプする」という動詞を使っています。
父親の言葉です。
hang outは「(ある場所に)入り浸る、よく行く」などの意味のくだけた口語表現ですが、hang out togetherは「一緒にいる」くらいの意味になります。
ledge「岩棚」は、ロッククライミングにおいては、岩の段差を利用して休息するスペースを確保するための重要な場所です。
just relaxing以下は現在分詞が並ぶ形になっていますが、考えの浮かぶままに言葉を並べた、話し言葉らしい文型です。
本文のmake it to the topは文字どおり「頂上に到達する」という意味ですが、慣用句としての「トップになる、大いに成功する」とも重ね合わすことのできる表現です。
ダッシュ記号以降は、セーラさんが登頂したときの様子を描写しています。
ここでのovercomeは「圧倒させる、感情でいっぱいにさせる」という他動詞の過去分詞形であることに注意してください。「感情でいっぱいになった、感情が込み上がってきた」といった訳語が合います。
"Yeah. I just can't believe I just did that."
「うん、自分がこんなことをやったなんて信じられないの」
頂上に到達後、父親の言葉にセーラさんが答えている場面です。
happy cryは、うれしさで感極まって泣いてしまうこと、「うれし泣き」です。
believe「信じる」のあとには、目的語として名詞やthat節が来る場合が多いのですが、ここではthatが省略されています。I just can't believe (that) I just did that.と解釈してください。
ここでのall には強調の意味合いがあり、that work、つまりセラさんが成し遂げたことがどれだけ労力を要するものであったかを強調しています。
celebrateは「お祝いする」という動詞です。名詞形は、celebration「お祝い」です。
Pizza Deck(ピザ・デック)は、下山して帰宅する途中に寄ったピザ店の名前です。
go down to ...は「~まで下っていく」ですから、この親子が帰途にあった様子が伺えます。
スタジオでアンカーが感想を述べている場面です。
well-deservedは「受けるに値する」という形容詞で、セーラさんにとっては、困難なロッククライミングを成功させたことに対するwell-deserved pizza「ご褒美のビザ」だったということです。
with everything on itは「その上に全てがのった状態で」で、つまりあらゆるトッピングが盛りつけられた特別の1枚であったことを説明しています。
ダッシュ記号(-)以下は、前段の内容を受けて、proving she is just 10 years old after all「結局、彼女がほんの10歳であることが分かる」につながります。
after allは「結局、どのみち」という表現で、文末だけでなく文頭に置かれることもあります。