2019年11月8日(金)
アンチドーピング機構にサイバー攻撃
MICROSOFT: HACKERS TARGET ANTI-DOPING AGENCIES
英語タイトルのMICROSOFT: HACKERS TARGET ANTI-DOPING AGENCIESは「マイクロソフトによると、ハッカーがアンチドーピング機関を標的に」です。コロン(:)は話し手が発表した内容を表します。
アメリカのIT企業マイクロソフトは、世界各国のアンチドーピング機構がサイバー攻撃を受けたと発表し、WADA=世界アンチドーピング機構がロシアの新たな不正疑惑を調査する中、ロシア側が仕掛けたものだと指摘しました。
このニュースには、会社や団体、それに国と、複数の固有名詞が登場します。それぞれの関係性や立場を理解し、この英語ニュースを読み解きましょう。
Microsoft says at least 16 sporting and anti-doping agencies have been hit with cyberattacks since September 16th. The company says the methods used are similar to those routinely employed by a group the firm calls Strontium. The group is believed to be associated with Russia's military intelligence agency.
The Russian government has not responded to the claims.
The World Anti-Doping Agency, or WADA, is currently conducting probes into allegations that Russia tampered with athletes' specimens and data from a Moscow lab. WADA is expected to decide this year whether to reimpose a suspension on Russia's Anti-Doping Agency, RUSADA. If it does, the country's athletes could be banned from the 2020 Tokyo Olympics and Paralympics.
センテンスごとに学ぶ
linked to ...は「~とつながっている、~と関連している、~と関係がある」です。
carry outは「実行する、実施する」という意味です。
名詞で「標的、目標」などの意味を持つtargetが、本文では「標的にする」という動詞として使われています。
ここでのprobeは「(違法行為などの)捜査」です。probeは「捜査する」という動詞としても使えます。一方、investigateは「捜査する」という動詞です。名詞形はinvestigationで、この意味でのprobe の類語です。文法的には、probes probe state-sponsored doping やinvestigations investigate state-sponsored dopingでも表せるわけですが、それでは言葉が重複してしまっておかしいので、主語と動詞で言葉を変えています。
state「国家」によりsponsored「支援を受けた」ですので、state-sponsoredは「国が後押しする、国家主導の」です。
このセンテンスはセンテンス1の続きで、マイクロソフトの発表の一部と解釈します。
sportingは「スポーツの」という形容詞です。sporting and anti-dopingの部分は、sporting agencies とanti-doping agenciesをあわせて、sporting and anti-doping agenciesとなっています。
hit A with Bは「AをBで打つ、AをBで攻撃する」です。
the companyは、マイクロソフトを指しています。the firmはthe company の言い換えで、やはりマイクロソフトを指しています。
thoseは、the methods「(攻撃)方法」を指す代名詞です。
routinelyは「日常的に、いつものように」という意味です。
ここでのemployは、use「使用する」と同じ意味で使われています。
そもそものstrontiumは元素の名前です。Strontiumを名乗るハッカー集団は、Fancy Bear「ファンシーベア」としても知られ、アンチドーピング機関のコンピューターシステムに侵入して不正入手した情報を公開しているとされます。
be associated with ...は「~と関連している、~と結びついている」という表現です。センテンス1の (be) linked to ...の言い換えになっています。
intelligence agencyは「情報機関、諜報機関」です。ここでのintelligenceは「機密情報、諜報」です。ちなみに、CIAとして知られているアメリカの「中央情報局」のフルネームは、Central Intelligence Agencyです。なお、intelligenceには「知性、知能」という意味もあり、いま頻繁に耳にするAI(artificial intelligence)「人工知能」という語にも使われています。
claimは「~は~である、~は~をした」というような「主張」です。証明されておらず、聞き手が納得するとはかぎらない断言について使います。本文では、ロシアとつながりのあるハッカー集団が世界のスポーツ団体やアンチドーピング機関をサイバー攻撃したというマイクロソフトの主張を指しています。
has not respondedは「まだ反応していません」ですが、ニュアンスとしては「今のところ」という語感があります。
このグループは2016年以降、アンチドーピング機構への攻撃を繰り返してきたとされています。今回の発表についてロシア政府は公式な反応を出していませんが、これまでは一貫して関与を否定しています。
the World Anti-Doping Agency「世界アンチドーピング機構」は、頭文字を取ってWADAと略されます。頭文字を取って1語として発音するものをacronymと呼び、UNESCO(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)「国連教育科学文化機関」、やNATO(North Atlantic Treaty Organization)「北大西洋条約機構」などがあります。
conductは「実行する、実施する」で、センテンス1のcarry outと同じ意味です。
a probe into ...は「~への捜査」です。
allegationの動詞形allegeは、証拠を提示せずに何かを事実だと主張することで、そうした主張をallegationと言います。ある者や組織が不正な行為、違法な行為を働いたという内容の訴え、主張です。
tamper with ...は「~を改ざんする、~をいじる」です。
(be) expected to ...は「~すると予想される、~する見込みだ」という表現です。
impose「~課す」に「再」を意味する接頭辞re-が付いたreimposeは「再び課す」です。impose A on Bは「BにAを課す」です。Aにあたる部分には通常、penalty「罰」、restriction「制約」、ban「禁止」、obligation「義務」、tax「税金」など、対象となる人(B)にとって望ましくない物事がきます。
ロシアの組織的なドーピング問題をめぐっては、WADAがデータの改ざんの疑いがあるとしてロシアに対する調査を行なっていて、今回のサイバー攻撃は、この調査が報じられる直前にあったということです。